研究

概要

電子の自転に相当する角運動量「スピン」が生み出す物性は多様であり、それを探求する研究は「スピントロニクス」という分野を確立しました。さらに最近では、電子のスピンと運動量を結合する「スピン軌道相互作用」が誘起する物性研究が活発化しています。
 林研究室では、原子層レベルで制御した薄膜ヘテロ構造を舞台に、スピンと光が絡む物理に関する研究を行っています。ディラック半金属やトポロジカル絶縁体、2次元層状物質など、スピン軌道相互作用が大きい物質における新たな物性・機能性を見出し、情報記録・通信や量子センシングなどに展開できる物理と材料の研究を推進しています。現在、大きく分けて以下の3つのテーマに関する研究を遂行しています。



研究テーマ

  • スピン流と磁性
スピントロニクスの中心テーマの1つであるスピン流と磁化制御に関する研究です。電流や熱流、振動や強誘電分極変動によるスピン流の生成機構解明を目指すとともに、スピン流による磁化やカイラル磁気構造の制御機構を理解し、次世代情報記録に展開できる技術を確立することを目指します。また、スピン流に代わる角運動量の流れとして注目されている軌道流(軌道角運動量の流れ)の大きさと物性への影響を調査します。
[研究項目]
  ・スピン流生成の物理
  ・カイラル磁性とスピン軌道トルク
  ・軌道流の探索

  • 非線形光学効果
物質における非線形光学効果に関して、特に角運動量を持つ円偏光が誘起する現象を調べる研究です。非線形光学効果とは強い光を物質に照射した時に、光の電場強度に比例しない現象を指し、光照射によって物質の屈折率が変化する非線形屈折率変化や、入射光と反射、透過光の周波数が異なる高次高調波発生や下方変換など、多彩な現象が知られています。本研究では特異な電子状態や構造を有する物質に円偏光を照射した時に誘起される非線形光学効果を調べ、将来の情報通信技術につながるシーズが生まれることを期待して、研究を行っています。
[研究項目]
  ・光起電流・光誘起スピン流
  ・カイラル構造の光制御

  • 強結合量子
電子や光は粒子と波、両方の性質を有していることが知られています。一方、物質の中にも粒子と波動の二重性を持つ状態が存在します。原子の振動に起因する波(フォノン)や、強磁性体や反強磁性体のスピンが歳差運動する際に誘起される波(マグノン)、さらに超伝導体の秩序パラメータを表す波(クーパー対)は、それぞれ粒子性も持ちあわせています。物質の中ではこれらの粒子・波が電子や光と相互作用してお互いの特性に大きな影響を与えます。林研では物質の中の粒子(波)間の相互作用が大きくなる極限状態を実現できる条件を解明し、量子センシング技術などに展開できる新たな物性、機能性を見出す研究を行っています。
[研究項目]
  ・フォノン・マグノン結合
  ・ジョセフソン接合