量子力学で当たり前のように出てくるスピン。スピンはどう見えるのか、どうしたら制御できるのか、どう使えるのか。
物性物理学において、電子がもつ角運動量「スピン」は磁性や電気伝導、光応答や超伝導など、多くの局面で重要な働きをすることが知られている。電子や光子、物質中の素励起であるフォノン(格子振動)やマグノン(磁気励起)など、スピンを持つ粒子や波動は物質の中でどのように躍動し、どのような物性を誘起するのか。これらの疑問に答え、スピンの物理学を確立することが林研の目標である。
スピンの向きが揃った電子が同じ方向に動く「スピン流」と呼ばれる電子の流れが存在する。スピン流は電流と違って散逸がなく(つまりスピン流を流してもエネルギーを消費しない)、電荷ではなくスピン角運動量を運搬する。スピン流を作ってその流れを操り、スピン角運動量を物質に出し入れすることでスピンが物性に与える影響がわかるため、本研究で明らかにする。
・スピン流生成の物理
・カイラル磁性
・軌道流
光子もまた電子と同様、スピン角運動量をもっている。
光子のスピンは「右回り」と「左回り」円偏光の2状態として現れる。
レーザーなどを使って特に強い円偏光を物質に照射すると、物質中の電子の状態が大きく変わることが理論的に提唱されている(Floquet理論)。本研究は高強度円偏光が誘起する不思議な電子状態を探求する。
・非線形光学応答
・カイラル結晶光制御
電子、光子、フォノン、マグノンなど物質中の粒子や波動はお互いと結合することが知られている。結合強度が大きくなると、2つの特性を合わせた新たな状態が現れる。粒子や波動間の結合に関する研究は近年、量子技術応用を念頭に活発化している。本研究は強結合状態を実現できる条件を解明し、量子力学に本質に迫る。
・フォノン・マグノン結合
・もつれ光子の物理